仕事と人

Interview

社員の想い

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公平性・公正性の観点から市場取引を監視し、
不公正が疑われる取引を精密に審査。

売買審査部
経済学部経済システム学科卒
2015年入社

現在の仕事

売買審査部は、日本取引所グループが提供する市場で不公正な取引が行われていないか日々チェックしています。代表的な不公正取引としては、上場会社の関係者等が職務や地位により知り得た未公表の会社情報を利用して自社株等を売買する「インサイダー取引」、売注文と買注文を同時に行う仮装売買や売買する意思のない注文を発注する見せ玉などの手法で相場を意図的に変動させる「相場操縦取引」があります。いずれにしても不正な手段で利益を得る行動は、市場の信頼性・公正性を損なうものであり、売買審査部では証券会社などの取引参加者や行政機関の証券取引等監視委員会と連携して不公正取引の防止に取り組んでいます。私は、日経平均先物や国債先物、金先物をはじめとしたデリバティブ市場における不公正取引の監視を担当しており、民間企業でありながら自社収益にとらわれることなく、公平性・公正性の観点から純粋に市場のため、社会のために働けることにやりがいを感じています。

JPXに入社した理由を教えてください。

大学では、当時社会を騒がせていた大相撲の八百長疑惑について、過去の対戦成績や勝率などを基に分析するなど、統計学を活用した社会的課題の解決に取り組んでいました。そうした経験から就職活動では、ビッグデータを使った統計分析を通じて社会に役立てる仕事を探していました。JPXは、日々の市場取引を記録した「売買データ」というビッグデータを保有しています。このビッグデータを解析すれば、市場の取引実態を解明できるのではないか。ひいてはこれまで以上に優れた取引制度を追究できるのではないか――。それは統計好きの一学生の思い込みであったかもしれませんが、面接で役員の方々が、その私の夢を興味深く聞いてくれたこともJPXに入社を決めた大きなきっかけになりました。

売買審査部の不公正取引を発見する業務フローを教えてください。

不公正取引は不自然な取引であるため、必ず何らかの特徴を持っています。売買審査部では売買審査システムを使ってスクリーニングを行い、不自然な特徴があった取引をすべてピックアップしています。しかし、それらがすべて不公正取引というわけではありません。投資家の投資判断はつねに変化しており、市場動向や社会情勢などさまざまな要因で不自然な特徴を示すこともあるからです。そこで、私たちはピックアップされた取引について、自らの知見や経験に基づき不公正取引の疑いがあるかどうかを一つひとつ判断します。
不公正取引の疑いがあると判断した取引については、さらに時間をかけて精査します。社内で何度も会議を行ったうえで、最終的に審査内容をレポートに取りまとめ、必要に応じて証券取引等監視委員会に報告します。そこまでが一連の私たちの業務となります。

売買審査を行ううえで、心がけていることはどんなことでしょう?

売買審査は表舞台に出ることのない裏方の仕事ですが、不公正取引につながりかねない取引を早期に指摘して未然防止に努めたり、取引参加者向けに過去の事例を紹介して不公正取引の知見を広めたりすることで、社会インフラとして健全で公正な市場を維持し、投資家の方々が安心して取引を行える環境づくりに寄与していると考えています。
一方で、私たちがもし誤った先入観に基づいて判断してしまうと、審査対象の投資家の人生に大きな影響を与える可能性があります。もとより不公正取引には明確で客観的な線引きが難しい側面も数多く存在するため、審査には慎重の上に慎重を重ね、十分なエビデンスに基づく判断を行うよう心がけています。以前関わった不公正取引の審査では、比較的明確な不公正取引の特徴に加え取引に関する情報提供もあり、不公正取引と疑うに足る理由がありました。それでも審査には十分な時間をかけ、精密に取引の詳細を明らかにしていきました。この審査案件は、その後新聞やテレビで大きく報じられ、私たちが社会に大きな影響を与える仕事をしていることを改めて実感させられました。

売買審査の仕事で、面白さを感じるのはどんなときでしょう?

特別な瞬間に面白さを感じるというより、売買データに接することそのものに面白みを感じています。膨大な売買データを見ていると、市場トレンドや市場に影響を与えている要因が浮かび上がってきて、市場が今何を感じ、どう考えているのかが垣間見えます。よくテレビなどで経済ジャーナリストが市場動向の分析や解説などを行っているのを拝見しますが、なかには私の肌感覚と異なっているものもあります。そんな目線で市場を捉えることができるのも、JPXが保有する圧倒的なビッグデータに日々接しているからだろうと思います。

ビッグデータを活用するという、入社時の夢は叶っているのでしょうか?

はい。これまで得た現物株式やデリバティブ取引に関する知識と経験を活かし、不公正取引を検知する新たな売買審査システムの開発に取り組みました。売買審査システムによって不自然な特徴があった取引をすべてピックアップしていると言いましたが、この段階で本来審査すべき不公正取引が漏れてしまうことは許されないため、その基準は幅広いものとなっています。一方で、問題のない取引を大量にピックアップしていてはスクリーニングの意味がありません。そこで私たちは、これまでの膨大な売買データや過去の不公正取引の事例を解析し、デリバティブ市場特有の制度や取引も考慮することで、不公正取引の特徴をより正確に捉えることに成功し、スクリーニングの精度向上を実現しました。

JPXで今後どのように活躍していきたいですか。目標をお聞かせください。

現在私が所属している売買審査部は、日本取引所グループが取り扱うすべての商品の取引実態を深く知ることができ、ここで得られる知識と経験は非常に貴重なものと考えています。しばらくはこの恵まれた環境で経験を重ね、いずれは深めた知見を活かしてより精緻な売買審査体制の構築や、取引制度の更なるブラッシュアップにつなげていきたいと考えています。不公正取引の中には“制度の隙間”を狙ったものもあり、制度の向上は公正・公平な市場の実現に欠かせない課題だと考えています。

Career Step

キャリアステップ

2015-1年目
東京証券取引所株式部に配属。現物株式市場の売買監理業務を担当。
2016-2年目
大阪取引所市場管理部に異動。デリバティブ市場の取引管理業務を担当。
2017-3年目
日本取引所自主規制法人売買審査部に異動。デリバティブ市場の不公正取引、商品間・市場間を跨ぐ不公正取引の監視業務に携わる。なお、6年目からは東京商品取引所自主規制室を兼務し、商品先物(コモディティ・デリバティブ)の不公正取引の監視業務も担当。